「幸せ」と「働きやすさ&働きがい」との関係性とは?
先日(2019年11月)【SDGs×幸福学×経営シンポジウム】が慶應義塾大学三田キャンパスにて開催されました。
私が取得した「SDGsビジネスコンサルタント」を主宰している一般社団法人SDGs支援機構が、今シンポジウムの事務局というご縁もあり、ボランティアスタッフの一員として参加させていただきました。
登壇者は、
※慶應義塾大学大学院 前野隆司教授
※産業廃棄物処理業界に革命を起こした 石坂産業 石坂典子社長
※第2回ジャパンSDGsアワード特別賞受賞 SUNSHOW GROUP 西岡徹人社長
※一般社団法事SDGs支援機構 代表理事 河上伸之輔氏
という時代の先端を走る4名のみなさまで、それぞれの講演&パネルディスカッションという贅沢なプログラムでした。
SDGs×幸福学×経営というタイトルのとおり、それぞれの親和性や関係性についても事例をもとに紹介されていて、とても有意義な時間でした。
その中で、慶應義塾大学大学院・前野先生が研究・推進している「幸福学」と平成25年度から当法人が事務局をさせていただいている「沖縄県人材育成企業認証制度(沖縄県雇用政策課事業)」との関係性について、大きな気づきがあったので、記したいと思います。(※SDGsに関しては、第2弾のレポートで・・・)
前野先生は、とても太っ腹な方で「講演の資料はパワーポイントでアップしているので、各自ダウンロードして、自由に使ってください(^^)(出典を明記)」とのことでしたので、その資料も活用させていただきながら・・・進めてまいります。
※幸福・幸せ ≒ Well-Being(良好な状態)and Happiness(感情としての幸せ)
◆(白井・理解)としてのWell-Beingは「今現在も良い状態。そして、今後もますます良好になる期待感に溢れている」というイメージ。
◆(白井・所感)平成24年度の沖縄県の調査においても「成長実感(今、成長を感じている)」も大切であるが、それ以上に「成長予感(今後もこの会社で成長する予感がある=期待できる)」が社員の成長&定着において重要である。という結果とリンクする。
※Well-Being(健康・幸福)経営が、本当の意味での「働き方改革」に繋がる
◆(白井・理解)「無理やり時短」にあるような表層的な「働き方改革」は幸福度を下げ、結果として、創造性・生産性の低下を招き、欠勤率や離職率の上昇にもつながっていく。
また、幸福感が高まれば、パフォーマンス(創造性・生産性)が高まり、マイナス要素(欠勤率・離職率)は低下する。
◆(白井・所感)目的と手段が逆転したような「働き方改革」では、ひずみが生じてしまう。生産性が上がった→残業が減る。創造性が高まった→イノベーションが起こる。が大切で、その前提として、Well-Beingを意識した経営が今後、ますます重要になってくる。
※世の中の価値観が、地位財(長続きしない)から非地位財(長続きする)へ変化している
◆(白井・理解)これから発展をしていく国や地域は別として、いわゆる先進国では、「金」「モノ」「地位」といった地位財(≒人の外面的なもの/比較がしやすい)から、「安心」「ココロ」「健康」といった非地位財(≒人の内面的なもの/比較がむずかしい あるいは 比較がいらない)が大切にされるようになっている。
◆(白井・所感)カーネマン博士の「年収が$75,000になるまでは感情的幸福は年収と比例するが、それを超えると感情的幸福と年収に相関はない(前野先生資料より)」という側面もあるが、
感覚としては、ICTなどの発展によって、事業をするにも生活をするにも「金」「モノ」「地位」が必ずしも重要ではなくなった。というイメージ。
(例)お金がなくても、クラウドファンディングを活用して世の中に商品・サービスがリリースできるようになっている。
(例)モノがなくても、シェアやリユースで手軽(てごろ)に手に入る。長く所有ではなくて、必要なときに使うようになっている。
(例)地位がなくても、SNSを通じて影響力を持っている人に会えるし、自身が影響力を持つこともできるようになっている。
そして、誰と働くか? カラダやココロが無理をしていないか? という点が重要になってきている。
※前野先生の研究によれば、幸せは「幸せの4つの因子」を満たすことによって得られる(幸せの心的要因に関連するアンケートを1,500人の日本人に行い、その結果を因子分析して、「幸せの4つの因子」を導出)
▼第1因子-自己実現と成長の因子(やってみよう因子)
・夢や目標を叶えた人は幸せ
・夢や目標を持っている人は幸せ
・努力して成長している人は幸せ
▼第2因子-つながりと感謝の因子(ありがとう因子)
・色々なことに感謝する人は幸せ
・親切で利他的な人は幸せ
・多様な友人を持つ人は幸せ
▼第3因子-前向きと楽観の因子(なんとかなる因子)
・自己受容できている人は幸せ
・楽観的でポジティブな人は幸せ
・細かい事を気にしない人は幸せ
▼第4因子-独立と自分らしさの因子(ありのままに因子)
・人の目を気にしすぎない人は幸せ
・自分らしさを持っている人は幸せ
・自分のペースを守る人は幸せ
◆(白井・理解)これまでにもあった様々な研究結果とも関連性が高く、それらが「幸せ(Well-Being)」という概念で統合されている。
◆(白井・所感)言われてみれば、確かにそう!という感じ。アメリカなどに代表される海外の研究結果ではなく、日本人の感覚や言葉で表現されているので、分かりやすい。
なお、言葉を表面的なイメージでとらえてしまうと「それって個人の在り方とか考え方によるでしょう!」とか「第4因子って、自分勝手な人みたい!」となってしまう恐れもあるので・・・
第1因子~第4因子を組織として創出していく・高めていくためには、どうしたら良いか?
このような特徴がある組織は、第1因子~第4因子が高い傾向があり、生産性や創造性が高い。
というのを「沖縄県人材育成企業認証制度」の「働きがい5分野15項目」で 個人的に紐づけをしてみることに・・・
※沖縄県人材育成企業認証制度「働きがい5分野15項目」とは?
◆(白井・解説)沖縄県人材育成企業認証制度とは、平成23年度に行われた「働きやすさ&働きがい調査(沖縄県雇用政策課)」結果に基づき、平成25年度秋からスタートした制度。官公庁が企業を認証するものとしては、全国初(当時)
慶應義塾大学SFC研究所の花田先生、高橋先生、宮地先生が中心となって同制度の中核基準となる「働きがい5分野15項目」を設定。
その設定にあたっては、イギリスの「IIP (investors in peaple) 」やアメリカの「働きがいのある会社(Great Place to Work®)」などを参考に、過去の企業ヒアリングや従業員アンケートなどを勘案。
▼分野1:ビジョンと人材像の実質化
▼分野2:コミュニケーションを通じた人材育成
▼分野3:仕事を通じた人材育成
▼分野4:職場育成機能を補完する人材育成投資
▼分野5:人・仕事・キャリアへの取組み姿勢の形成支援
※沖縄県人材育成企業認証制度 テレビ番組「働きがいTVパート1~4」をWEB上でご覧いただけます。
http://okinawa-jinzai-ninsyou.jp/hatarakigaitv/
以下からの(白井・主観的紐づけ)については、こじつけ感いっぱいのところもありますが、その点は、あらかじめご了承ください。
※分野1:ビジョンと人材像の実質化
-項目1-1:ビジョンと人材像の明確化
Q:組織として目指す姿、期待される行動や人材像などが明確に定義されている。
-項目1-2:人材像に基づく採用・評価・登用
Q:「期待される人材像」に基づいて人材の採用が行われ、その基準が評価制度や人材の登用基準にも十分反映されている。
-項目1-3:ビジョンと人材像の浸透・共有
Q:組織として目指す姿や、期待される人材像の意味するところが社員にも広く浸透し、共有され、具体的な仕事の場面での意味を社員一人ひとりが理解している。
◆(白井・主観的紐づけ)「幸せの4つの因子」のうち、第1因子―自己実現と成長の因子(やってみよう因子)と第4因子―独立と自分らしさの因子(ありのままに因子)と相関があるのでは・・・
会社として目指す姿や期待される行動や人材像が明確に定義され、それが社員に浸透していると、自然と「夢や目標を持っている人」や「努力し成長している人」になると考えられる。
また、「期待される人材像」に基づいて人材の採用が行われると、会社にフィットする人が採用される(≒ミスマッチが発生しにくい)ため、結果として「自分らしさを持っている人」が活躍できるのではないかと考えられる。
※分野2:コミュニケーションを通じた人材育成
-項目2-1:コミュニケーションを通じた相互理解と支援
Q:社員は、自分の仕事における期待や果たすべき役割について、上司や周囲の先輩、同僚等と十分なコミュニケーションを通じて理解しており、仕事への取組みにあたって周囲から支援を受けている
-項目2-2:フィードバックによる気づきを通じた能力開発
Q:この会社では、上司だけではなく先輩や同僚、部下、後輩など多様な人から、ポジティブ・ネガティブ両面のフィードバックを受けることを通じて、一人ひとりが気づきを得ている。
-項目2-3:相互に学び支援し啓発し合う組織
Q:この会社では相互学習の場が多く、互いに教え合い、学び合い、刺激し合うことが習慣となっており、社員はそうした機会を十分得ている。
◆(白井・主観的紐づけ)「幸せの4つの因子」のうち、第2因子-つながりと感謝の因子(ありがとう因子)と第3因子-前向きと楽観の因子(なんとかなる因子)と相関があるのでは・・・
「仕事への取組みにあたって周囲から支援を受けている」や「互いに教え合い、学び合い、刺激し合うことが習慣となっている」職場では、自然と見守られている感(≒放置されていない感)を得ることができるであろうし、そうなれると、新しいことや難しいことにチャレンジしようという前向きな感情が芽生えるとも考えられる
また、「多様な人からのポジティブ・ネガティブ両面のフィードバックを受ける」については、第1因子―自己実現と成長の因子(やってみよう因子)とも関連がありそう。
※分野3:仕事を通じた人材育成
-項目3-1:仕事及び必要能力の体系化・可視化と自身の能力水準の把握
Q:一人ひとりが、仕事の全体像や背景、仕事遂行に求められる能力発揮水準、それと比した自身の現在の能力発揮レベルを理解した上で、日々の仕事に取り組んでいる。
-項目3-2:仕事における背伸びを通じた能力開発と成長
Q:一人ひとりが、常に成長できるように、育成を意識した「背伸びをさせる」仕事や課題の付与が社員に行われており、背伸びの過程では経営者や管理職が支援をしている。
―項目3-3:キャリアステップの提供による成長の継続
Q:この会社は、個人の中長期的、継続的成長や、キャリアの形成のための次のステップ(社内外を問わず)を社員に意識させ、その機会を提供している。
◆(白井・主観的紐づけ)「幸せの4つの因子」のうち、第1因子-自己実現と成長の因子(やってみよう因子)と第4因子―独立と自分らしさの因子(ありのままに因子)と相関があるのでは・・・
「育成を意識した「背伸びをさせる」仕事や課題の付与」や「個人の中長期的、継続的成長や、キャリアの形成のための次のステップ(社内外を問わず)を社員に意識」を通して、一人ひとりと対応している。ということが社員に伝わっていると、会社の期待する成長スピードと自分の成長ペースのすり合わせが可能になると考えられる。
結果として、「夢や目標を叶えた人」にもなるであろうし、第3因子-前向きと楽観の因子(なんとかなる因子)「自己受容できている人」とも関連がありそう。
▼分野4:職場育成機能を補完する人材育成投資
▼分野5:人・仕事・キャリアへの取組み姿勢の形成支援
との紐づけについては、12月18日ぐらいの(その2)で行いたいと思います。
今後は、「職場の基礎代謝」診断とも連携できないか?なども考えてみます。
例えば、グーグル社がプロジェクト・アリステレスの結果を2016年に発表した「生産性の高い(成功している)チームに必要な5つの要素―心理的安全性が有名」といった感じで・・・。
(文責)職場の基礎代謝®専門家/沖縄人財クラスタ研究会・代表理事 白井 旬(2019年12月10日)
【SDGs×幸福学×経営シンポジウム】で前野先生への記念撮影をお願いしました。